受験を意識し始めると気になってくるのが「偏差値」です。
では、どうして受験では平均点ではなくて偏差値を使うのでしょうか。
なんとなく偏差値が高い方が学力が高いというイメージがありますが、偏差値は単純に数字が大きい=頭がよいというわけではありません。
結論から言うと、偏差値でわかるのは「自分が集団の中で上位何%にいるか」です。
今回は、偏差値の見方や求め方、計算式などを参考動画も交えながら、わかりやすくご説明します。
ただし、偏差値というのは基本的に個人が計算するものではありません。
計算出来るようになることよりも、偏差値から正しく情報を読み取れるようになることを目指していきましょう。
偏差値とは「上位何%に入っているか」を表す数字
偏差値は、同じテストを受けた集団の中で自分がどのくらいの位置にいるのかを示す値です。
平均点が基準となっていて、平均点をとると偏差値が50になります。
●平均点=偏差値50
ここが偏差値を理解する上で、非常に重要なポイントなので覚えて下さい。
つまり、
●偏差値が50より大きい値=平均点より点数が高い
●偏差値が50より小さい値=平均点より点数が低い
という意味です。
一般的には、偏差値は25~75ぐらいの範囲に収まることが多いです。
ごく稀に偏差値が100以上やマイナスの値をとることがありますが、そういう極端な値になる時は「はずれ値」といって他のデータの分布から極端に外れています。
はずれ値はデータとしての信憑性が下がるので、このような極端な値の偏差値は気にしなくて大丈夫です。
簡単に例えると、クラスの人数にもよりますが、クラスで1人だけ100点をとり残り全員が0点だった場合に、はずれ値が出ることがあります。
しかし1人以外誰も解けないテストに意味を感じますか?
感じませんよね。つまりそのクラスに適していないテストというわけです。なので実力の測れないテストで出た偏差値に意味(データとしての価値)は無いということです。
「偏差値が高い=学力が高い」ではない
「偏差値が高い=学力が高い」と思われがちですが、そうではありません。
先程も出ましたが、偏差値はテストの難易度に関わらず、平均点をとった人が偏差値50となるんでしたよね。
そのため、テストを受ける集団の学力によって偏差値は変わってきます。
例えば、学力の異なる2つのグループA・Bが同じテストを受けたとします。
グループAの平均が80点、グループBの平均が30点という結果になりました。
このときグループAの人は80点をとっても偏差値50なのに対して、グループBの人は30点をとれば偏差値が50になります。
【同じテスト】
グループA:80点をとれば偏差値50
グループB:30点をとれば偏差値50
同じ集団が複数のテストを受けても、テストごとの難易度によっても偏差値は変わります。
例えば、あるグループが2つのテスト(英語・数学)を受けたとします。
この時、英語で60点、数学で50点をとったら、英語の方が自分は得意だと感じる人が多いと思います。
しかし、英語の平均が70点、数学の平均が40点という結果になると、英語は偏差値が50より小さく、数学は偏差値が50より大きくなり、数学の方が偏差値は良くなります。
つまり、偏差値50をとるために必要な点数が異なってくるのです。
【違うテスト】
英語:70点をとらないと偏差値50にならない
数学:40点をとれば偏差値50になる
つまり、偏差値を正しく使うためには
- 自分が比較したい集団と同じテストを受ける
- 自分が比較したい集団の中での偏差値を参照する
ことが大切です。
3年生の秋になると偏差値が下がると言われるのは全体の平均点があがるからです。
また、中学校から高校に上がると偏差値が下がるのも同様の理由なので、この2つのタイミングで偏差値が下がるのは自然なことです。
大事なのは、自分が勝負したい集団の中での偏差値です。
例えば目指している中学、高校、大学の受験生がその集団に当たります。
偏差値の順位早見表(自分が上位何%の位置にいるかが分かる)
偏差値の順位早見表です。偏差値の数字が上位何%を示しているのかはおよそ以下の表のとおりです。
偏差値 | 最上位からの割合 | 順位/1000人 | 何人に1人か |
80 | 0.13% | 1.3位 | 769.2人 |
75 | 0.62% | 6.2位 | 161.3人 |
70 | 2.28% | 22.8位 | 43.9人 |
65 | 6.68% | 66.8位 | 15.0人 |
60 | 15.87% | 158.7位 | 6.3人 |
55 | 30.85% | 308.5位 | 3.2人 |
50 | 50.00% | 500.0位 | 2.0人 |
45 | 69.15% | 691.5位 | 1.4人 |
40 | 84.13% | 841.3位 | 1.2人 |
35 | 93.32% | 933.2位 | 1.1人 |
30 | 97.72% | 977.2位 | 1.02人※ |
※偏差値30は本来四捨五入して「1.0人」ですが、分かり難いので小数点第二位(1.02人)まで表示しました。
偏差値の仕組みをグラフで理解する
ここで偏差値をより深く理解するために、専門的な解説をします。
この項目は難しいので、軽く流す感じでもOKです。
説明を読んでもわからない人は、「偏差値の求め方」の項目でわかりやすい解説動画をいくつか紹介しているので参考にして下さい。
テストの点数の分布を図に表すと以下のようになります。
横の軸が点数、縦の軸が人数を表しています。
(図1)
このように分布の山が右や左に偏っていたりします。他にも
(図2)
このように分布の山が複数に分かれている場合もあります。
しかし、このように毎回違う形をしていたら比べにくいですし、自分の学力がどのくらいの位置か(つまり偏差値がいくつか)わからないですよね。
なので、この分布を下の図(図3)のようなわかりやすい形に整えたものが偏差値の分布になります。
(図3)
偏差値は平均を50、標準偏差を10にしたものなので、50から離れるほど当てはまる人が減っていきます。
※標準偏差についてはこの後解説します。
偏差値の求め方【※参考動画有り】
偏差値は自分の点数だけでは求められず、計算式も複雑です。
なので、あくまで、どんな値から求まっているのかを知る参考程度に読んでもらえれば大丈夫です。
わかりやすい参考動画もいくつか紹介するので、そちらも参考にしてみてください。
偏差値の計算には、「点数」「平均値」「標準偏差」の3つの値が必要です。
「点数」:偏差値を求めたい点数(例:自分の点数)
「平均値」:受験者全体の平均点
「標準偏差」:点数のばらつきを表す数値
「標準偏差」って何?
点数のばらつきと言われても、ピンと来る人は少ないと思います。
あまり聞きなれない「標準偏差」とは、簡単に言うと「自分があと何点上がると偏差値が大きくなるか」を示しています。
そのため、標準偏差の値が小さい(点数の差が小さい)ほど偏差値は上がりやすく、標準偏差の値が大きい(点数の差が大きい)ほど偏差値は上がりにくくなっています。
マラソンでの順位をイメージするとがわかりやすいかもしれません。
みんながまとまっている(ばらつきが少ない)時には少しスピードを上げればすぐに順位が上がりますが、バラバラに走っている(ばらつきが大きい)とちょっと頑張ったくらいでは前の選手には追いつけず、順位はなかなか上がりません。
↑このような集団(ばらつきが小さい)の中で走っていた場合、頑張ればすぐに順位は上がりますよね。
これは簡単にイメージできると思います。
逆に↓の状況ならどうでしょう?
このような集団ではない(ばらつきが大きい)状態では、ちょっと頑張っただけでは順位は上がらないですよね。
このどのくらい「ばらけているのか」を数値化したものが標準偏差です。
●標準偏差が大きい=点数のばらつきが大きい(平均点から離れている人が多い)
●標準偏差が小さい=点数のばらつきが小さい(平均点から離れている人が少ない)
標準偏差の計算方法
標準偏差は、受験者全体の点数と平均点を使って求めます。
計算式は以下の計算式で求めることができます。
偏差値の計算方法
偏差値は、以下の計算式で求めることができます。
下の参考動画でも説明していますが、偏差値の計算式にある「10」倍や「50」を足すというのは偏差値を見やすく(わかりやすく)するために用いられています。
私達が普段の生活で使用する0~100といった数値になるべく収めるために用いています。
これが無いと私達が普段目にする「偏差値50」や「偏差値65」といった値に収まらず、「偏差値0.5」とか「偏差値-5」とかになってしまいます。
自分の学力の位置が「0.5」とか「-5」と言われてもピンときませんよね。
それよりも偏差値50なら「真ん中くらいだな」、偏差値65なら「けっこう上位に食い込めたな」というイメージがしやすいですよね。
これは私達は普段から0~100という数字に慣れ親しんでいるからです。
偏差値の求め方【※参考動画】
偏差値をより深く理解するために参考動画を紹介します。
●探求学舎:「優秀さをどうやって測るのか?偏差値の仕組みと標準偏差とは?」
TVなどメディアでも有名な探究学舎の動画です。とても分かりやすくまとまっています。素晴らしい動画です。
●ラムダ技術部/Yoidea:中学数学でわかる偏差値の意味と計算【受験生必見】
こちらも分かりやすいです。中学生でも分かるように解説されています。
●予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」:全受験生が理解するべき!偏差値とは何か
このyoutubeチャンネルも有名です。学校の授業のように一番専門的に解説しています。
専門的ですが、とても分かりやすいです。
偏差値を見るときの注意点
偏差値は、問題の難易度によらずに自分の実力を図ることができるのでとても便利な数字です。しかし、その特性からどんな時でも使えるわけではありません。
偏差値は、偏差値を求める集団の中での位置を表しているので、受験者の集団が異なると比較することができません。
また、分布というのは数が少ないと特定の値の影響を受けやすくなってしまうので、受験人数が少ないとデータとしての正確さに欠けます。
「平均偏差値」と「ボーダー偏差値」は何が違うの?
大学受験では、「平均偏差値」と「ボーダー偏差値」という2種類の偏差値を目にすることがあります。
どちらも模試などを受けた時に自分が合格できそうかどうかを判断するために使いますが、この2つは意味合いが少し異なります。
●平均偏差値:その大学を合格した人が模試でとっていた偏差値の平均
●ボーダー偏差値:その大学の入試の合否確率が50%と予想される偏差値
つまり、平均偏差値は去年の合格者の実績、ボーダー偏差値は予想です。
ボーダー偏差値は河合塾が使用している数値で、倍率も数値に影響します。
※ボーダー偏差値の算出方法は非公開
平均偏差値は多くの予備校が使用している数値なので、一般的には平均偏差値の方が目にすることが多いと思います。
まとめ
偏差値を使うことで平均点が違うテストでも比較することができます。
そのため、テストごとに偏差値が変動しても受験者の中で上位何%以内に入っているのか判断することができます。
偏差値を効果的に利用するためには、自分が比較したい対象の集団の偏差値を見て考えることが大切です。
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